Katsute_no_kigouのブログ

弱さの発露として世界を語ろう。それが遺書である。

人間の世界と私の構造は常に重ね合わされる。

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消え去る前の小話
 人生とは分からん。ただ働かねばならない。
 私達の価値は大まかに二つだけある。労働力、生産力だ。仕事も出来なければ家庭を持ち、子を成すことも能わない。私の価値はほとんどない。
 労働、製作、活動、それが人間の条件だと言ったのは朧げながら社会学者だったと記憶している。
 私はそのどれも低水準で歩む。能が無いのだからこの社会で生きる人間でないような気がしている。
 私はいい加減な人間である。緻密な仕事が出来ないのだ。その癖余計なことにばかり気を取られる。その度に脳を破壊してしまいたくなるが、私はそこから逃げられない。
 
 思えば自己肯定感は昔からあまり無かった。私には居場所がないから。私のような上げるべき声すら分からぬ人間は死ぬべきなのだ。この社会、全体的な押し付けが存在し、異質なものは排除される。多様性など人間は求めてなどいない。そうした綺麗事で自身の醜さに蓋をして起きるのが差別なのだから、綺麗事を語るなとは言わないが、人間はそれほど立派でも、優れた生き物でないことを知っておくべきだろう。
 Justice stickは飴玉の中に爆薬を仕込んだ。人間は殺人を許容できる生き物だ。他者を非人間化することで易々と人を殺してのける。福岡で少年が女子供を刺し殺す。理由を知るつもりも無いが、面識の無い他人は人間ではない。または、弱いなにか。
 そのような形で人間との距離が広がれば、遠ざかれば、殺人は容易になる。精神的な距離も肉体的な距離も、全て人間の殺し易さに比例する。そうやって同種を殺し、自身の居場所を安全にしようとする。
 他者へ向くか、自身へ向くかの違いはあるが、どちらも殺しには違いない。社会との距離や繋がりが適度に保たれていないと、結局そうなる。
 何もない愚者。一回だけ書籍化出来た人がいた。そんな人が自身には何も無いと悲しむ。
 
 私はそれ以下である。その悲しみは同程度か? 個人差は誰にも測れない。
 今の職場では無能である。恐らく他の場所でも変わらないだろう。仕事の有り様は自身が生み出す付加価値による、利益(ROIや営業利益率だけではない、組織内のモチベーションや小さな効率化も含まれる)の拡大だけが私達の共有すべき目標である。その中で、大多数の人間が考えられることと私は乖離している。
 気を付けていても一つの見落としで台無し。私の頭はそこから離れていく。利益、価値を生み出すことはほとんどなく、ただ軽視され留飲を下げる為の何かでしかない。
 繰り返してしまうから、他の人と同じ見落としでもそれらは大きく反感を買う。いつもいつも、どうしてそうなるのか。一つ一つ順番に処理をしようとしても、そこに割り込みが入り、どれも手が付かなくなる。
 不思議ですね。私はこの価値と利益と成長の只中に溺れかけている。
 少ないながらも様々な人を見て来たが、沢山の人と知り合いになり、様々な発案が実現出来るような人は一つ飛び抜けている。
 結局のところそうした人間が、価値あることを実現できる。
 決して、私のような地下室でこのような文章を書いている人間ではない。
 この社会で価値を生み出せない人間は、ただ働かねばならない。目の輝きはただ若さと未来への希望が多大に含まれていたから。そこから若さが引かれてしまえば、次に目にするのは未来の手前の死。希望はその死の煙によってかき消されてしまう。
 私は音楽や小説といった所で、少ないながらも誰かに価値あるものを生み出したかった。プロでなくとも、価値のない私が出来る唯一の表現だと考えていたからだ。
 そうして死の煙の中にかき消されつつある。私は仕事で頭が回らなくなり、何も考える余裕がない。ただ、ゲームをして、それを世界に垂れ流し、楽器をちょっと弾いてみるくらいしかない。
 
 死ぬまでの暇つぶし。太陽はさっさと私を焼き尽くしてくれないか。
 
 圧倒的残業は圧倒的成長!
 と聞いたのは二年前だったろうか。
 
 私はもう十年近い日数を仕事に費やしたが、具体例を挙げて、自分の言葉でスキルを定義できない。成長を具体的に表現できないのだ。
 成長、私の肉体は既に成長の坂でなく老化の坂を下っている。若者でない人間はじわじわと能力のなさで追い詰められていく。いいトシして、こんなことも出来ない、これだけは出来る。しかし求められるのは幅広い人間とやり取りを進め、成果を出す、利益を出す、物を作り上げる、何度も利用されるサービスを生み出す、他者への価値を生み出す。お前に付加できるものは何なのだ、それを問われ続け、私は何もないことをずっとささくれのように抱えていた。皮だけ裂けていたものが、その先の肉を裂き、その体を引き裂く。
 私は自分の言葉で自分をビジネスの領域で表現できない。
 ただ、ただ。私が表現できるのはこうした延々と繰り返される再帰的な散文でしかないのだ。小説を書こうと試みていたが、それらは他者への価値を生み出すことはない。自分の内奥にしかない表現をする以外に出来ることはない。
 
  ああ、こいつは駄目だ。という素直な態度に私は押し潰された。
世界観と構造代謝の最中に消えゆく灯火