喚いてもただ一つの自傷癖
人間なのに感情から逃げられると思っていたか?
どう考えても不可能だ。お前が人間という構造に落とし込まれている限り。
感情というものから逃げてきたので、ふと様々な感情をぶつけられるとそれを何とか乗り越えることすらも出来ずに逃げてしまう。
それはプライベートでも、職場でも。そうした感情を持っている人と関わるのが苦手で、それは年齢や性別、立場関わらず耐えられない。
最近どうやら隣の島の若手が僕の仕事ぶりを外から見て「嫌いだ」と大きな声で言っていたのが聞こえた。特定の個人の名前を上げていなかったが、これまでの話の内容から僕の仕事の結果についての事らしい。その次の週くらいに、イニシャルで濁して話しているのも聞こえていた。僕からはきっと良い案も出ない。言葉の端々に感じる軽蔑。
これは幻聴だろうか、そうであればよいのだが現実はそうでもない。
軽蔑を感じることで生まれる小さなストレス。今の職に就いてから幾度も感じてきたものだ。その度に僕は自傷を止められない。何故うまくやれないのか、この腐った頭が悪いのではないか、そうやって頭を殴りつける。目から火花が散る。
そんな歪な努力で七年ばかりやって来た。そうするべきでなかったし、そうあるべきではなかった。
僕はどこまでこの世界とこの構造に閉じ込められ続けなければならないのか。
自身に有った場所などはどこにもなく、この適応の結果が有っている職場などないようにも感じている。
アサーティブなコミュニケーションがこれを癒してくれるだろうか、そもそも内に溜め込み、ただ我慢することだけでやってきた人間が、その泥沼から抜け出すことの難しさに追い詰められてしまっていた。
別に変らなくても、自分の出来ることを少しずつ積み上げるしかない。
プライベートである約束を破った。
そのことについて問い詰められて、覚えていなくて、怒って拗ねて悲しまれて、それを生じさせた哀れな自分がとても我慢ならない存在に思えてきてつい
『俺なんか消えてしまえばいい』『こんな頭なんて壊れてしまえ』
などと叫びながら頭を壊そうとする。叩く。叫ぶ。堪えられない。
小さなストレスをずっと持ったままいるから、ちょっとしたことが堪えられない。耐えられない、やり過ごすことが出来ない。
殴りつけた両のこめかみの後ろが痛い。この余計なことを口走る肉体も無くなってしまえばいいのに、ただ黙って栄養だけを摂取する家畜であればいいのに、フォアグラにされるガチョウのように虐待されて喰われることを望んでしまう。
喚きながら、自傷を行いながら、やってくる希死念慮すらも振り切ってしまえ。
耐え切れないのだから、結局は壊れるまでやり切ってしまう。
弱い男は死んでしまえ、消えてしまえ、という。金を稼げなければ終わり、結婚できなければ終わり、偉くなれなければ終わり、人から信頼を得なければ、リーダーシップを獲れなければ終わり。男らしさと感情・自分を大切にすることは断絶したまま。
幸福とは結果であり、それは不可視な構造を持っていた。
対比は全て滅亡に到る。廃屋に住み、その古びた記憶の中だけで生きている。
屈せずに、この身を笑う。