311212
消え去る前の小話
〔死骸〕
私は雲の中に絡まるゴミ。人間たちと自身を区分したな?
そうして夢などなく生きていた。そんなものは早めに消してしまえ よと言われそうだなごもっともと肯く。肯定されないのだ、 いてもいなくても、死以外にあるまい。どうして死がこわいのだ、 死骸のくせに。何もしても糞みたいな傍観が付き纏う。喋るクソど もと私は同じだ。あのクソどもをぶち殺せ、死ぬ迄苦しむ傷を残し てやれと囁く。自身の力などない癖に漂う。このクソッタレの社会 から飛び込むために駅のホームは存在している。 人の死はただの迷惑である。葬式も自殺も、生きている人間はそれ を嫌がる。迷惑そうに通り過ぎる。片っ端からミンチにしろ、 この霊長類共を絶滅させろ。その怒りはどこから現れるのか、社会 から遠ざかる不適合者を安楽死させろ。それを望んだゴミ共と同じ にしろ。宅間守が無為に子供を七人も屠ったのはそうしたいじけた 根性からだ。木嶋佳苗に殺されるはずの私はここにいる。殺された プラモが趣味の男性のブログを今でも覚えている。婚活を頑張りつつ趣味をブログに上げていた男性は静かに自身の中で生きていた。ささやかでも生きているのがとても頭の中に残っている。何故ならこれは私なのだ、 霊長類共が見ている。目玉は存在しない。私達はわざわざ苦労して 目玉を取り出した。それ故に見ていないものが見るという行為を具 体化出来ない。
死ねないのだ。殺してくれ。そう叫んだ男は殺意を振るうのを狙っ ている。人間が口を出すのを今か今かと待っている。ここにいるよと言ってもそれは透明だろう。私は透明な死骸であり、その中で絡まる。
死ねないのだ。殺してくれ。そう叫んだ男は殺意を振るうのを狙っ
〔産卵〕
そんな中に現れたのは卵だったろうか。太陽に首を垂れた後に見か けた。人間から産み落とされないはずの卵がそこにある。それら、 この形、は、揺籃の最中に集まり、私の整合性を奪い去る。もはや なんの形もない。卵は産卵管を通してやって来るが、その様子すら ない。抽出された他の動物がここにいるとでも? 私は左右に視線を、上下に意識を、周囲は焼け焦げた大地だけがあ る。そこには太陽と私以外に存在しない。しかし、私は卵を見つけ てしまう。そんなはずはないだろう、ここに他のものがありそれは 焼け焦げていない。焦げ尽くしてしまったのか、表面はザラついた 炭素の層に黒く触ればその先から焦げていく。
それを卵と断定するのは早くはないか。この社会に世界に問題など 課題など一つもない。それらは相対的だ。 生きて死ぬ中でそれが出来ても虚しい。それが出来ないから虚しい と感じる私は幻。上司が飽き飽きとした態度で私を浮かべている。 どうしてゴミ箱に入れないの? そんなことを会社で言うわけにはいかない。段取りが悪いとか、効 率的に動けないとか、そうした人間らしい営みの寒々とした態度。 だから舐められるわけにいかず、弱音を吐けばという話にもならな い。そこにあるのは一般に流布する構造、 迎合するさまざまなものだ。打ち込まれたものをよく見ておくべき だ、私たちに自我などほとんど残されていない。それがなければ死 ぬ社会など誰が望むか、何が資本主義だ、何が国家転覆だ、 同じグラウンドでクソまみれになる精神ども、私はそこで何も言わ ずたたずむ。私の意見など人間らしさの破壊以外に役に立たない。 破壊すべきは日本などという小さなスケールではない。人間という ものの自我を全て奪い去らなければならない。社会の全てがゴミの ように輝き、丸められて何かわからないものへと変化していく。
そういった面であれば卵なのだ。人間なのだから卵はあり得ない。 だがそれらは人間が生み出した卵に他ならない。
そんな中に現れたのは卵だったろうか。太陽に首を垂れた後に見か
それを卵と断定するのは早くはないか。この社会に世界に問題など
そういった面であれば卵なのだ。人間なのだから卵はあり得ない。