人間の世界と私の構造は常に重ね合わされる。

210815

消え去る前の小話

 暑い。熱のうだる中を暑さに順応できず空調の部屋から僕は太陽を見ていた。こんな快晴なら殺人が起きてもいい。頭の中にいるアラブ人を撃ち殺すムルソーと畳の上で寝転がりああ次の瞬間にはこんな逃避もモラトリアムもないのだ。強制されていた様に見えたものは特に強制されてなかった。生は開かれている、個々の世界観が衝突しちょっとした性欲と女の子と今日も心配だから送るよの言葉は関係を築けているだろうか、おそらく築けていないのだ。もう骨董品のように黄ばんだPlaystationを起動して、その音に少し驚く。この音が苦手だったしデジモンワールドがクリアできなくてバイオハザードの1~3をだらだらとクリアしていた。撃ち込まれる弾丸と怪物と時間を浪費する僕はこの世界から目をそらしていた。そらすより他なかった。浮浪者になろうとする試みは失敗し、留年が確定し、両親は恐れ、お金はなく、そうだ。ただ生きるのにも金がいるのだ、この太陽の熱を感じているだけでは何にもならない。そうやって何かを考えるのをやめるように振り払うようにゲームのコントローラーに触れていた。アルバイトや社会人や沢山のものが迫っていた。続けることだけは簡単だから、我慢すればそれでいいから。自死を選ぼうとする人間は僕よりも強固に我慢を続け一つのことを望み続ける。自分を消すなどそれは悪いことで個人の責任でもない。この社会が見ていないだけだった。とにかくそんなことだから気分は爽快でこんな無駄に時間を浪費している。

 余暇があるから人間なんだとミギーが言う。人間の産業廃棄物こそが恐ろしくそれより他はない。それが地球で僕は太陽の熱を愛している。恋というもの愛というものセックスというものは口にするだけでそれ以上は理解していない。実体験のない想像だけで僕は生きている。だから高校生だったころの、中学生だったころの夏休みの過ごし方と変わらずにゲームをしている。そこにはやり方があるし、続ければ終わらせられるから。その後に有る虚しさは繰り返すほどに僕は人生の落後者になるだろうと大学の講義に参加し、眠気が取れず何ものかになれないが何者かを定義されるこの社会と人間の生に悩んでいる。ただ続ければ死が待つ。続けていても死が来る。列車に人が吸い込まれてはどこかへ連れて行かれ、また列車が来ては人が吸い込まれる。未来永劫それの繰り返し。世界が滅びかけている時の夢を見る。慌てていた祖母と心配する両親の最中、半壊した実家と赤熱した隕石が降り注ぐ東京湾。大丈夫、よかった生きてた。生きてしまったんだ。

 扇風機に当てられて気分が悪かったから、意味もなく図書館にへ行けば受験勉強中の高校生が自習室を占拠している。ああ僕は予備校の学習スペースで居眠りしていたのだ。継続すればきっとどこかに引っかかる。そう思っていたら、運よく大学生になってしまった。それがダメだったら、体を消費して働こうと思っていたのに。そんな勇気もないが選択がなければそれをやるしかない。自由に生きられる能力がある人になりたかったがそうではないなんて学生やってれば否応なしに分かってくる。ビジネスは分からない、体を使って時間を消費すれば文化的に生きるにギリギリではあるけれど、僕はその程度の能力の人間だ。彼女が欲しいと言ってみせてもそれはどこにも繋がらない。そもそもそれが何を意味しているのかすら分からない。誰かと一緒に生きていく、という行為が想像つかない。勢いもない。僕の勢いは内奥で氾濫していてそれらが上手く外に出せないもどかしさをずっと抱えている。伝えようとしたことは一割も伝わらない。こうして散文的に文章をひけらかすことくらいしか出来ない。それらが外側に意味するところも同じようなんだろう。ユングの元型論を開いてみて、太陽信仰の偏執病者の例を見つける。シュレーバー症例の太陽肛門、太陽はどこにだってある。ああ暑い。最後の時間を持て余す老人が新聞を読んでいる。バスが駅へ人を運んでいる。僕はどこかに引っ掛かった、それも風前の灯火だった。

 誰かに何かを相談しても明確な答えが得られることはない。何を望んでいるのかが僕にも分からないからだ。大学を出て、就職をして、流れるように歳を取っていく。それらだけが僕に出来る精一杯のことで、自分で企業をするとか一人で食えるような活動が出来るわけでもない。凡人、聞こえはいいがその先に続くものがない。だから暑い外を歩いて、無駄に汗を流して社会が動いているのを感じている。誰もが先のことを考えているようで考えてはいなくて、目の前の暑さにクーラーが欲しいとか、喫茶店に入ろうとか、プールに行こうとか話している。人々の営み、僕は友人とファミレスで深夜にグダグダと話をするくらいしか出来ない。ベンチでしょうもないことを話して、それ以上は何もなくて、それが大学生の生き方だったのだろうか。

世界観と構造代謝の最中に消えゆく灯火